佐賀大学大学院医学系研究科 地域包括医療系 生物統計学・生物情報学分野

医学領域における統計学

私が考える医学領域における統計学の位置づけについて以下の図に示しています.医学研究,臨床・基礎研究から得られたデータを解析する役割にあり,発見をする探索的解析,試験をする検証的解析,に分けられます.

探索的・検証的それぞれに対し,統計学的方法の開発,臨床研究における共同研究,を行っています.主に探索的解析では脳画像解析,検証的解析ではノンパラメトリック法の開発を行っています.さまざまな臨床研究で共同研究をはじめ,今でも継続的に行っております.また, 臨床試験の解析業務などを行っています.

脳画像解析

脳画像はその最小単位であるボクセル毎に与えられる値を色に対応させて得られます.この値をデータ値として,各個人の画像を基準画像に合わせ,複数の対象者データから形態や機能を統計学的に評価します.例えば画像情報を基に病気の診断確率を算出したりします.画像を区切ったボクセルは一人あたりおよそ100万個あり,これはエクセルのシートにおいて列が100万項目ある事に対応します.よって脳画像データは高次元データまたはビッグデータと言われる区分に属すると言えます.脳画像解析においても多くの統計学的手法が研究されています.

参考文献

  • 川口淳 (2017). メタアナリシスと脳画像解析.神経治療; 34:229-234. pdf
  • 川口 淳 (2017). 脳画像解析における統計学的クラスター推測.日本磁気共鳴医学会雑誌; 37(2):39-49. pdf
  • 川口 淳 (2012). 脳MRIデータの統計解析.計量生物学,33(2),145-174. link

本研究室でのプロジェクトの1つとしましては,ミュービッグ(muBIG; MUltimodal Brain Imaging Genetics)データ解析があげられます.脳画像と遺伝子情報の関連を調べる解析はimaging geneticsと呼ばれ近年盛んに行われています.これに脳画像だけでも構造や機能といった脳を多角的に調べるために多彩なモダリティ(測定方法の種類)が存在します.同様に遺伝情報も多岐にわたり,さらには臨床検査値や生活習慣などとの関連を調べる事も考えられます.ミュービッグデータ解析プロジェクトはこのようなデータを包括的に解析する方法論として位置づけられ,すでに基盤となる成果が得られています.今後は,より多くの実データ解析を通して,この方法論の実現可能性及び有用性を高めていきます.さらには脳以外の医用画像にも応用していき,画像を用いた客観的診断補助ツールの開発を行いたいと考えております。

学会発表資料

  • 川口淳. マルチブロック成分法による脳画像解析.
    2018年度統計関連学会連合大会, 中央大学, 2018年9月13日. pdf
  • 川口淳. 階層型成分法によるマルチモダル脳画像解析.
    2017年度統計関連学会連合大会, 南山大学, 2017年9月6日. pdf

解析ソフト

  • Kawaguchi A (2016). Software environment for statistical computing R package msma: Multiblock Sparse Multivariable Analysis. link
  • Kawaguchi A (2020). Software environment for statistical computing R package mand: Multivariate Analysis for Neuroimaging Data. link

主要業績

  • Kawaguchi A (2019). Supervised sparse components analysis with application to brain imaging data. In Neuroimaging - Structure, Function and Mind, Golubic SJ (Ed.), IntechOpen, 1-19. link
    (Software) msma version 1.2
  • Kawaguchi A, Yamashita F (2017). Supervised Multiblock Sparse Multivariable Analysis with Application to Multimodal Brain Imaging Genetics. Biostatistics, 18(4) 651-665.
    (Software) msma version 1.0
  • Kawaguchi A (2016). Diagnostic Probability Modeling for Longitudinal Structural Brain MRI Data Analysis. In Statistical Techniques for Neuroscientists, Truong KY. (Ed.), CRC Press, 361-374.
    (Software) msma version 0.7
  • Kawaguchi A., Truong, Y. Huang, X. (2012). Application of Polynomial Spline Independent Component Analysis to fMRI Data. In Independent Component Analysis for Audio and Biosignal Applications, Ganesh R Naik (Ed.), InTech, 197-208. link

臨床試験方法論

臨床試験のための統計解析手法の開発も行ってきました.検証的な解析においては計画書作成しそれに従い解析を行います. そのため計画書作成後に得られる解析データにより正規性などの仮定の検証をして解析方法の選択することは原則できません. こうして仮定が少ないノンパラメトリック検定が好まれる場合もあり,ウィルコクソン検定(マンホイットニーのU検定)が代表的です.これは上述の場合に有利でもありさらには順序変数の解析に適しています.
私たちの研究では, (単変量)二群比較の解析方法であるウィルコクソン検定を 多変量解析(共変量調整)が行えるように拡張し,さらには,欠測を含むような経時測定データ,多重エンドポイント,層別解析が行えるような包括的な方法を開発しました. また,特別な場合としてクロスオーバー試験に対する方法論も開発しております.

学会発表資料

  • 川口淳, Gary G. Koch, Xiaofei Wang. 層別多変量マンホイットニー推定量による2 種類の治療法の比較. 2010年度 日本計量生物学会年会, 統計数理研究所, 2010年5月21日. pdf

解析ソフト

  • Kawaguchi A, Koch G G. (2015). sanon : An R Package for Stratified Analysis with Nonparametric Covariable Adjustment. Journal of Statistical Software, 67(9), 1-37. link

主要業績

  • Sun H, Kawaguchi A, Koch G G (2017). Analyzing Multiple Endpoints in a Confirmatory Randomized Clinical Trial - an Approach that Addresses Stratification, Missing Values, Baseline Imbalance and Multiplicity for Strictly Ordinal Outcomes. Pharmaceutical Statistics, 16 157-166.
  • Kawaguchi A, Koch G G, Wang X. (2011). Stratified Multivariate Mann-Whitney Estimators for the Comparison of Two Treatments with Randomization Based Covariance Adjustment. Statistics in Biopharmaceutical Research, Vol. 3, No. 2, 217-231.
  • Kawaguchi A., Koch, G. G., and Ramaswamy, R. (2009): Applications of Extensions of Bivariate Rank Sum Statistics to the Bilateral Crossover Design to Compare Two Treatments Through Four Sequence Groups. Biometrics, Volume 65 Issue 3, 979 - 988.
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